ひとり親として日々子育てと仕事に奮闘する中で、ふとした瞬間に「このままの働き方で大丈夫かな?」と不安になることはありませんか?
私自身、二人の子どもを育てながら働いてきました。上の子が高校を卒業して就職した際、児童扶養手当が大幅に減額され、翌年には一部支給も受けられなくなった経験があります。当時は驚きと戸惑いでいっぱいでした。
このブログでは、ひとり親家庭が知っておくべき「収入と手当の関係」について、私の体験を交えながらわかりやすく解説していきます。
ひとり親の方の就職相談を受ける中で一番多い「非課税のまま暮らすには?」「手当を減らさずに働くには?」といった疑問にお答えし、安心して働き続けるための情報をお届けします。
よくある相談①「非課税のまま暮らすにはどのくらい働けるの?」
ひとり親の方から最もよくある相談の一つが、「今は住民税非課税のままだけど、これからどのくらい働いていいの?」というものです。
「非課税」の基準とは?
ここで言う「非課税」とは、主に「住民税の所得割が課税されない状態」のことを指します。これは、収入が一定の基準以下である場合に適用されます。
住民税には「均等割」と「所得割」があり、非課税とされるには以下のような条件があります:
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所得割・均等割ともに非課税となる目安(ひとり親・子2人扶養のケース)
→ 給与収入ベースでおよそ年収204万円以下
→ 月収にすると、約17万円前後
※正確な金額は自治体や扶養人数、控除の有無によって異なります。
こんな場合に注意!
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パート・アルバイトで複数掛け持ちしている方は、全体の収入が合算されるため注意が必要です。
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扶養控除や寡婦控除などがある場合、同じ収入でも課税・非課税の扱いが変わることもあります。
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翌年の住民税に影響するため、年末近くで急に収入が増えると、翌年から非課税でなくなることもあります。
非課税のままでいるメリット
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医療費助成、保育料の軽減、就学援助などの支援が受けられる可能性が高まります。
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児童扶養手当の支給額が多くなることもあります(※ただし、手当の審査基準は「所得」ベースです)。
「働きすぎ」に注意。でも、働かない選択もリスク
住民税非課税を維持するために働き方を抑える方もいらっしゃいますが、長期的に見て年金額やキャリア形成への影響も考える必要があります。制度を味方につけながら、バランスよく就労を考えるのがベストです。
よくある相談②「児童扶養手当を満額もらいたい」
就職や転職を考えるひとり親の方から、もう一つよくある質問がこれです。
「今、児童扶養手当を満額もらっています。
これを減らさずに働くには、どこまでセーフですか?」
児童扶養手当の仕組みをおさらい
児童扶養手当は、18歳(※障害がある場合は20歳)までの子どもを扶養するひとり親家庭などに支給される制度です。
手当の支給額は、扶養する子どもの数と前年の所得に応じて変わります。
所得が低ければ満額支給、高くなるにつれて段階的に減額され、一定以上で支給停止となります。
※所得の基準は「所得税上の所得」で、給与収入とは少し違う計算方法になります(給与所得控除後の金額)。
満額支給が受けられる収入の目安(扶養する子2人の場合)
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所得基準:約 130万円以下(※所得税計算上)
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給与収入ベース:約 220万円以下
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月収ベース:約 18万〜19万円
(あくまで目安です。自治体や扶養控除等で変動します)
こんな落とし穴も…
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副業収入や雇用保険の失業手当も、所得に含まれる場合があります。
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収入がぎりぎりラインでも、控除の有無(寡婦控除、障害者控除など)で結果が大きく変わることも。
満額にこだわりすぎない働き方もアリ?
満額を意識して働き方をセーブすることも一つの選択ですが、長い目で見たときに、
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スキルアップの機会が減る
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将来の年金や社会保障が不安
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子どもが成長したあとに手当がなくなったときに困る
といった課題もあります。
「今は少しでも多く手当をもらいたい」というお気持ちはよくわかります。でも、将来の自立や収入アップのチャンスをどう活かすか?も、あわせて考えていくのがポイントです。
よくある相談③「手当がゼロになるのは困る!一部支給はどこまで?」
ひとり親にとって、児童扶養手当は生活を支える大切な支援です。
「満額じゃなくてもいいから、少しでも手当がもらえれば助かる」という声もよく聞かれます。
では、手当がまったくもらえなくなるラインはどこなのでしょうか?
児童扶養手当の「一部支給」とは?
児童扶養手当は、「満額→一部支給→支給停止」という段階的な仕組みです。
所得が満額の基準を超えても、すぐにゼロになるわけではありません。一定の上限までなら減額された状態で支給されるのが「一部支給」です。
子ども2人を扶養している場合の児童扶養手当「一部支給」の目安
項目 | 金額の目安 |
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所得の上限(給与所得控除後) | 約 236万円 |
給与収入ベース(源泉徴収票の総支給額) | 約 525万円 |
月収ベース(ボーナスなしで12分割した場合) | 約 43〜44万円台 |
●補足説明:
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所得制限は「所得ベース」で計算されるため、給与収入から各種控除(給与所得控除、扶養控除、社会保険料控除など)を差し引いた金額が基準となります。
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「給与収入ベース」で見ると、扶養親族2人(たとえば子ども2人)の場合、約525万円くらいまでなら一部支給の可能性があるというのが、2024年度の目安です。
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ボーナスの有無や控除の内容で微調整が必要になるため、正確な計算は市区町村の窓口での確認がおすすめです。
※あくまで目安です。扶養する子の人数、控除の有無で変動します。
これを超えると、児童扶養手当の支給が「ゼロ」になります。
「え?こんなに働いたらダメなの?」と驚く前に…
実際には、「年収500万円超えて手当ゼロでも生活は成り立つ」というケースもあれば、「400万円未満でも、家賃や教育費がかかってカツカツ」という家庭もあります。
つまり、“支給があるかどうか”だけでは判断できないのです。
一部支給でもらえる金額は、数百円〜数千円と少額になることもありますが、その金額よりも、
・児童扶養手当を受けていることで、医療費助成や各種軽減制度が使えるかどうか
・自立支援教育訓練給付金など、関連する制度が受けられるかどうか
といった「制度のつながり」が実は大きな意味を持ちます。
手当を維持するために働く量を抑える? 収入を伸ばして制度を卒業する?
この選択に正解はありません。
でも、制度に頼りながら準備を進め、将来的には自立した生活基盤をつくることが目標のひとつになってくるかもしれませんね。
よくある相談④「上の子が就職して手当が減った!? 子どもが18歳を過ぎたらどうなるの?」
「子どもが高校を卒業して働きはじめたら、児童扶養手当が減額された…!」
「次の年には手当がゼロに。こんなに急に!?」
これは実際に多くのひとり親家庭が直面する“予期せぬ変化”のひとつです。
児童扶養手当は「18歳の年度末」までが対象
まず知っておきたいのは、児童扶養手当の対象となる子どもは原則として、
18歳になった年度の3月31日まで(※障害がある場合は20歳まで)
という点です。
たとえば子どもが高校3年生で12月に18歳になった場合でも、3月31日までは対象です。
ですが、翌年度からはその子は「対象児童」ではなくなります。
扶養している子の人数が減るとどうなる?
児童扶養手当の金額や所得制限の基準は、「扶養する子どもの人数」で決まります。
つまり、対象児童が1人減ると、満額の支給額も下がり、支給基準となる所得の上限も下がります。
たとえば、
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子どもが2人 → 1人(1人は扶養から外れる)になった
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所得制限の上限:約236万円 → 約192万円に下がる(※所得ベース)
その結果、「前年と同じ収入なのに、手当が急に減った・ゼロになった」ということが起こるのです。
就職した子どもの収入は関係ある?
子どもが就職していても、子ども本人が扶養から外れた場合や、同居していない場合は、その子の収入は原則関係ありません。
ただし、住民票上の世帯構成や税法上の扶養状況などによって、影響が出る場合があります。
就職した子どもの収入は児童扶養手当に影響する?
状況 | 扶養から外れている | 同居していない | 住民票上の世帯構成 | 手当に影響 |
---|---|---|---|---|
✅ 子が扶養から外れ、別居している | はい | はい | 別世帯 | 影響なし |
⚠️ 扶養から外れたが、同居している | はい | いいえ | 同一世帯 | 影響が出る可能性あり(世帯収入に含まれる場合あり) |
⚠️ 扶養に入っており、同居している | いいえ | いいえ | 同一世帯 | 影響あり(所得にカウントされる可能性が高い) |
✅ 扶養から外れており、世帯も分かれている | はい | はい | 別世帯 | 影響なし |
❓ 住民票は同一だが、実際は別居 | はいまたはいいえ | はい | 同一世帯 | ケースバイケース(自治体の判断により) |
🔸 ポイントまとめ
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税法上の扶養を外れることと、住民票上の世帯を分けることが重要。(世帯分離ではだめです)
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同居=自動的に影響があるとは限りませんが、「住民票上の世帯構成」によって判断されることが多いです。
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各自治体によって運用が少しずつ異なるため、市区町村の福祉課に確認するのが確実です。
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わたしも経験しました
実は、わたし自身がこのパターンでびっくりした一人です。
上の子が高校卒業後すぐに就職し、「親としてはホッとした」のもつかの間、翌年から児童扶養手当が大幅に減額。そしてその次の年には「支給停止」の通知が届きました。
「子どもが働く=家庭が安定する」というふうに見られがちですが、実際はまだまだ教育費も生活費もかかる時期。
急な支給停止には、本当に驚きました。
児童扶養手当の支給停止もショックでしたが、ひとり親家庭等医療も同じ所得制限(住んでいる地域による)でしたのでこちらも停止になりました。
私は耳鼻科と内科に定期的にかかっていたので、医療費がこんなにかかるのかと予想外の出費で、ひとり親家庭等医療のありがたみをひしひしと感じました。
まとめ:制度の仕組みを知っておくことが安心につながる
「支給停止は仕方ないこと」と割り切れることもあれば、「ちょっとでももらえる方法があったなら知りたかった!」ということもあります。
制度は年々変わることもありますし、「知らなかった」では損をすることも。
子どもの成長とともに支援内容が変わることを、あらかじめ理解しておくと、心構えができるかもしれません。
【ワンポイント知識】養育費も「収入」として見なされるって知ってた?
「養育費は“もらってるだけ”だから収入には入らないと思ってた」
そんな声もよく聞かれますが、実は…
👉 児童扶養手当の計算では、養育費の80%が“収入”として加算されます。
これは、「誰が稼いだお金か」ではなく、「家庭に入ってくるお金」として扱われるためです。
たとえば:
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給与収入:月10万円
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養育費:月4万円
この場合、4万円の80%=3.2万円が収入に加算され、
実質収入は月13.2万円として扱われることになります。
これが所得制限に関わるため、「収入がそこまで高くないのに手当が減った(なくなった)」というケースにつながることも。
養育費がある場合は、支給額や非課税ラインに影響することを前提に、事前に計算しておくと安心です。
【ワンポイント知識】iDeCo(イデコ)を使うと、所得が下がって手当に有利になるかも?
児童扶養手当の支給額は、「所得の額」で決まります。
つまり、課税される所得が低ければ低いほど、手当が有利になる仕組みです。
そこで知っておきたいのが、**iDeCo(個人型確定拠出年金)**の活用。
iDeCoで積み立てた金額は「全額が所得控除の対象」になるため、
📉 所得を減らすことができ、児童扶養手当の支給額や非課税ラインに影響することもあります。
たとえば、月1万円をiDeCoで積み立てていると、年12万円分の所得が控除される=計算上は「収入が12万円少ない人」として扱われるのです。
注意点:
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iDeCoは「老後資金」としての制度なので、60歳までは引き出せません。
- 節税や手当との関係だけで始めるのではなく、将来設計とあわせて慎重に判断しましょう。
まとめ:制度に振り回されないために、"仕組み"を味方につけよう
ひとり親家庭にとって、児童扶養手当や非課税制度は、とても心強い支えになります。
でも、「どのくらい働いたらどうなるか?」を正確に把握するのは、とても難しいのも事実です。
今回ご紹介したような、
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非課税の収入ライン
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手当の満額支給・一部支給の基準
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子どもの就職・成長に伴う変化
などは、「あらかじめ知っていれば選択肢が広がる」情報です。
手当があることに感謝しつつも、いつか手当がなくなっても困らないように、
少しずつ準備をしていけると安心ですね。
制度に振り回されるのではなく、「制度の仕組み」を味方につけて、
自分らしい働き方や暮らし方を見つけていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。